糸洲十訓

糸洲十訓(いとすじゅっくん)とは近代空手道の祖、糸洲安恒先生が、空手(唐手)とはいかなるものかということを論理的に解明し、後世のために残された十訓です。この糸洲十訓によってはっきりと体育的な面を打ち出しているが、この精神が糸洲先生の創案した平安の型に端的に表現されています。原文は候文で書かれているので、ここでは現代的な文にわかりやすく直しました。



1.空手は体育を養成するだけでなく、いずれの時でも国のために身を犠牲にしてでもつくし、一人の相手と戦うのが主旨ではなく、万一盗賊乱法人にあったときでも、なるべく拳や足をつかって、怪我をさせないように心が掛ける。

2.空手は専一に筋肉を強くし体を鉄のごとく固め、また手足を鎗鋒(そうほう)に代用するものならば、自然と勇武の気持ちを発揮させる。できれば小学時代より練習させれば、他日、他の諸芸に応用する便利を得て社会の一助に役に立つ。

3.空手は急に上達するものでなく、牛が歩くがごとくゆっくりと上達するものがあるが、終わりには目的を達するとういがごとく、毎日一時間か二時間くらい一生懸命に練習すれば3・4年の間にふつうの人より体力がつき、空手の真髄を極める人が多くできると思う。

4.空手は拳足を必要とするものであるから、常に巻き藁にて鍛え、肩を下げて肺を開き、強く力を取り、また足も強く踏みつけ下腹に気をしずめて練習すること、その突く回数も片手に百か二百は突くこと。

5.空手の立ち様は腰を真っ直ぐに立て、肩を下げ力を抜き、足に力を入れて立ち、下腹に気を沈め、上体と下半身の力を引き合わせるようにすることが大切である。

6.空手の技は数多く練習し、一つ一つ技の意味を質問して、この技はいかなる場合に使うべきかを確かめて練習すること、また入れ(突き)受け、はずし、取り手の法(つかんできた手をはずしたり、逆をとったりすること)があるが、昔からこれは師が弟子に口伝(口で伝えること)していることが多い。

7.空手の技はこれが「体」を養うのに適しているか、また「用」を養う(護身術に用いる、実戦的に用いる)に適するかを予め確かめて練習すること。

8.空手の練習をするときは実戦をしている気持ちで目を正しく見、肩を下げ、体を固めまた受けたり突いたりする時も、現実に相手の攻撃を受け、相手に突き当てる気持ちで、常々練習すれば自然と実戦で戦うときに成果がでるものであるので、くれぐれもこのことに注意すること。

9.空手の練習は体力不相応に余り力を入れすぎると頭に血が上がり、(血圧が上がり)、顔が赤くなり、眼が赤らみ身体に害になるから注意する。

10.空手の熟練の人は、昔から長寿の者が多い。その原因をさぐると筋肉を発達せしめ消化器を助け、血液循環を良くし長寿の人が多い。自今以後空手は体育の土台として小学時代より学課に編入し広く練習させれば、将来人に秀れた人材が多くできると思う。


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