洲道館の理念

1.心と体を鍛える


空手とは、何百年も前から数多くの先人たちが試行錯誤の末に練り上げた闘うための技術体系、いわゆる『武術』です。さらに戦闘技術の必要が薄れてきた近年、技術以上に精神を鍛える『武道』として発達しています。その技術や精神は現代にも脈々と受け継がれ、世界中で多くの人々が空手を学んでいます。

人間の体力は20歳代がピークと言われています。もちろん努力によってピークを維持する事は出来ますが、それでも維持するのが精一杯です。ですから現在のスポーツに見られるような筋力パワーを主体にしたプレーは、20歳代をピークに筋力が衰えていくため、早々と限界が見えてきます。

武道・武術はその性質上、『歳をとったら使えない』では役に立ちません。ですから技術体系を筋力主体のものとせず、むしろ必要以上の筋力に頼らないように練り上げてきました。また、武術の持つ力の意味を延々と考え続けてきました。心の働きや呼吸、気というものは身体運動をより高いレベルに導く重要な要素です。ですから生涯を通して打ち込み、成長し続けていくことが出来るわけです。

『心と体を鍛える』という言葉は良く聞きますが、実現は非常に難しいものです。空手道洲道館では、スポーツ的な強さではなく、沖縄・日本の伝統文化である武道・武術的な強さを念頭において、生涯に渡って続けられるように鍛えていきます。

また、スポーツ化されると空手本来の技が活かされないため、武道性というものが失われてしまいます。その為に空手道洲道館では、『武術・武道』を念頭に稽古をいたします。

2.頭脳と身体で憶える


皆さんも経験があるとおり、人間は頭で憶えたものは時間がたつにつれて忘れてしまいます。遠い記憶、使わない知識など、せっかく憶えてもいつかは忘れてしまいます。コレは脳のシステム上、仕方の無い事です。どんな立派な知識でも『使わなければ忘れる』と言うことです。

しかし、身体動作は違います。一度出来るようになった動作は、それ以降忘れることはありません。昔と今の体力の差こそあれ、昔やった事は自分でも驚くほど憶えているものです。これは頭脳で記憶するのではなく、全身の運動神経で憶えて身につけているためです。

『意味は解らないけれどとりあえず体で憶える』というやり方は昔からあります。これは特に理解力の低い子供のころに良くやります。このやり方は、最初は一定の成長を見込めるものの、後になって伸び悩むことが多くあります。理由は『意味が解っていない』の一言に尽きます。特に空手は一見簡単そうに見えても、非常に複雑な理論で体を動かす技が多くあります。意味が分かっていなければ『武術』ではなく『踊り』になってしまいます。

ですから、体と頭の両方でバランス良く憶えるのが一番です。『頭でっかち』でも『脳まで筋肉』でもいけません。空手道洲道館の空手は、頭で理屈を、体で技術を憶えます。これは空手に限らず、人生においてすべての事に応用できます。

3.競争の是非


今の社会は受験などで、小・中学生のうちから競争原理の中で戦わされています。子供は闘争心を大人以上に持たなければいけないのが現状です。それなのに、さらに空手の試合でも競争の場を作ってしまうのは、良いとは思いません。もちろん生きていくうえで『闘争』は欠かせませんが、必要以上の『闘争』は人格形成にマイナスだと思います。

ですから洲道館の空手は、とくに子供のうちは『競わない』『争わない』ことを主眼として稽古をしています。空手という戦闘技術の成り立ちや、現代の他の空手団体の活動から考えると、『競わない』『争わない』というのはナンセンスに思われるかもしれません。しかし最終的に空手の極意は『戦わないこと』に尽きると考えます。これはもちろん『逃げること』と同意ではありません。

ですから子供達には空手の稽古を通じて体を鍛えて自信を持たせ、あえて『競わない』『争わない』ということの意味を考えながら強い精神力を育てて行きたいと考えます。ただし『抜かない剣は武人の誇り』という言葉もあるとおり、『使おうと思えばいつでも使える技』を持つ事は非常に重要です。よって精神教育一辺倒になる事はせずに、稽古は厳しく行います。

4.型の重要性


昔から受け継がれてきた空手の鍛錬法として『型』があります。空手の技を決められた順番で一人で『演武』するため、知らない人からは踊りのように見えます。空手を良くご存知で無い方でも、どこかで見た事はあるかもしれません。

『型』は空手の長い歴史上の達人たちが編み出し、改良し、伝えてきた、頭と体で覚える教科書のようなものです。ですから、空手を習得するための正しい身体操作方法や、攻守にわたって使うことが出来る工夫された様々な技を盛り込んであります。もちろん、通常の踊りである『演舞』とはまったく違うものです。逆に言うと『型』は、その意味をしっかり理解しないことには『演舞』となってしまいます。これではまったく意味がありません。

『型』を正しく理解し習得するには、かなりの年月と鍛錬が必要となります。即効性のある鍛錬方法ではないため、効果を疑問視する声も多く聞かれます。特にスポーツのように、早急かつ明確に結果を出さなければならないような練習をする人には人気がありません。

空手の動作で重要なのは、正しい姿勢から自然に備わってくる力とスピードです。全身の筋肉が緊張していない、脱力した状態からの一瞬の動作が空手の真骨頂です。これは筋力のトレーニングをして身に付くものではありません。その正しい姿勢を作りるのに『型』は非常に重要で、理にかなっています。現代社会では遠回りな稽古方法だと思われがちな『型』ですが、洲道館ではこれに重点を置いて稽古しています。



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